【再配達が有料に？】置き配が宅配の新常識に。物流を支える新ルールとは

いま、物流業界が抱える深刻な課題のひとつが「ドライバー不足」です。人手不足が進む中で、再配達の多さが現場の大きな負担となっており、その解決策として注目されているのが「置き配」の標準化です。

国土交通省は、再配達を減らし、物流全体の効率化を図るため、宅配便の基本的なルールを定めた「標準運送約款（やっかん）」の見直しに着手する方針を明らかにしました。

これまで置き配は、受取人が希望する場合の対応にとどまっていました。しかし今後は、在宅・不在を問わず「置き配」を標準サービスとし、手渡し配達を追加サービスとして扱うことが検討されています。つまり、これまで無料だった手渡し配送に対して、今後は追加料金が発生する可能性が出てきたのです。

なぜ今、置き配の見直しが必要なのか？

背景には、慢性的なドライバー不足があります。国交省は2023年度までに再配達率を6%以下に抑える目標を掲げていましたが、昨年10月の時点で約10％と、達成には至っていません。とくに都市部では再配達の件数が膨大となり、ドライバーの業務負担が限界に達しているという声も聞かれます。

そこで国交省は、標準運送約款を改正し、「置き配＝標準」の流れを全国に広げることで、再配達そのものを前提としない仕組みに転換しようとしているのです。

今回の約款見直しが実現すれば、全国の宅配事業者が配送ルールを見直し、置き配を前提としたサービス設計が可能になります。これにより、次のような効果が期待されます。

・再配達が減り、ドライバーの負担が軽減

・配送の効率化により、1日あたりの配達件数アップ

・手渡し配送を希望する人には、その分のコストを反映（＝価格の適正化）

一方で、置き配には盗難や破損のリスクも伴います。これにどう対応するか、保険制度や責任の所在などについても、有識者による検討会で議論される予定です。

「標準運送約款」とは、国土交通省が定める宅配業務の基準ルールで、多くの配送業者がこれをひな型として自社の約款に採用しています。そのため、もし今回の見直しが正式に改正されれば、日本全国の宅配ルールに大きな変化が起こると見込まれます。

将来的には、「置き配が標準」「対面配送はオプションサービス」というスタイルが、ECサイトや宅配アプリにも反映されていくことでしょう。

物流の現場を支えているのは、限られた人数のドライバーたちです。私たち消費者が、配送の在り方について正しく理解し、置き配など新たなスタンダードを受け入れることは、これからの社会にとって欠かせない取り組みです。

荷物が届くありがたさを当たり前にせず、新しい配送ルールへの理解と協力を通じて、持続可能な物流を一緒に作っていきましょう。