多くの車両にAT（オートマチック・トランスミッション）が採用されていますが、多くの積み荷を積載し車両重量が重くなるトラックはMT（マニュアル・トランスミッション）の搭載率が高い傾向。

使用ギアを任意に選択できるMTは、トラックの運転に慣れたドライバーにとって効率的に運転できる魅力的な変速システムですが。ただ、走行中にギアが入らないというトラブル発生のリスクを孕んでいるのも事実。中古トラックに対して「ギアトラブル発生リスクが高いかも？」とイメージを持つ方が少なからず存在しますが、ギアトラブルはメンテナンスで回避できるので中古トラックでの発生率が特に高いわけではありません。

今回はトラックのMT車で発生するギアトラブルの原因や応急処置の方法を解説します。

 

目次

1. MT（手動変速機）の基礎知識
2. ギアが入らないトラブルの発生源とは？
3. ギアが入らないトラブルを切り抜ける応急処置法とは？
4. ギアトラブルはトラックの専門家がいる中古トラック販売店へ！
5. ギアトラブルは原因を探ることがポイント

 

MT（手動変速機）の基礎知識

発進や加速、登坂時など強い駆動力が必要な時には低いギア段で、高速巡行時には高いギア段を使用して走行しますが、使用するギア段をドライバー自身が行ないながら走行するのがMT（手動変速機）。

左足でクラッチを踏んだ状態でシフトノブを左手で操作してギア段を選んで、クラッチを戻してシフトチェンジを行います。ギアの選択を誤るとギクシャクした走りで騒音や振動、燃費の悪化などを引きおこしますが適切なギア選択を行えば快適な低燃費走行を実現します。

オーソドックスな変速システムですが多くのドライバーに支持されていて、トラックへの搭載率が高い変速システムだと言えます。

 

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トランスミッションの役割は？

エンジンの発生動力を1：1でダイレクトに駆動輪に伝えるのは非効率です。

発進や登坂など大きな力が必要な時は、ペダル直結のギアの大きさと駆動輪である後輪ギアの大きさが近いほうがスムーズ。スピードに乗ると後輪ギアを小さなものに変速すれば、ペダルをゆっくり踏んでも高速巡行できます。

トランスミッション内は複雑に組み合わされた歯車が組み込まれ、歯車の組み合わせで変速比を発生させてギア段が低ければ高変速比でギア段が高くなるほど変速比は低くなります。

トランスミッションはAT・MTを問わず全車両に搭載されていますが、AT車よりも手動変速を行うMT車で存在感を感じる装置です。

 

ギアが入らないトラブルの発生源

 

多くのトラックに採用されるMTですが、変速しようとしてもギアが入らずシフトチェンジできないトラブルが発生することも。

シフトチェンジができないと最悪走行不能に陥ってしまうので、ここではギアが入らないトラブルの発生源について解説します。

ギアトラブルの原因を系統別に探る

ギアが入らないトラブルが生じた際には、トランスミッションのどの系統でトラブルが発生しているのかを察知することがポイント。

トランスミッションは以下の3系統に分類されて、発生源ごとにギアトラブルの症状が異なります。

 

■ミッション系統

■クラッチ系統

■ミッションリンク系統

ミッション系統

トランスミッション本体の問題で発生するギアトラブルがミッション系統のトラブル。

「1速・2速など特定のギアが入らない」「「停車時でエンジン停止状態でもギアが入らない」などの症状が発生します。ミッション内部のギアの摩耗が原因のケースが大半ですが、トランスミッションは高価なパーツなので、交換やミッションのオーバーホールにはそれなりの費用がかかります。

クラッチ系統

エンジン出力はクラッチ装置を経由してトランスミッションに伝えられて、変速時はクラッチ操作でエンジン出力を一旦切断しシフトチェンジを行います。

ペダル操作で動力の伝動をコントロールできるクラッチなので、問題が生じるとギアが入らないトラブルの原因に。クラッチ系統のトラブルの多くはクラッチが完全に切れなくなっていることが原因で、クラッチが切れていない状態で変速してもギア鳴りが生じてギアが入らない症状も出ます。

エンジンを止めた停車状態では問題なくギアが入ったとしても、エンジン起動時にギア鳴りがしギアが入らなければクラッチは切れていません。ワイヤー式クラッチは遊びの調整、油圧式ならリーズシリンダやマスターシリンダからの油漏れの確認やエア抜きで改善できるケースが一般的です。クラッチのレリーズベアリングの動きが悪くてクラッチが入らない場合は、オーバーホールが必要です。

ミッションのリンク系統

シフトレバーとトランスミッションを接続するミッションリンゲージの不具合で、ギアが入らないトラブルが発生するケースもあります。

シフトレバーとトランスミッションはワイヤーやロッドで接続されていて、「ワイヤーがスムーズに動かない」「ステーへの固定プレートの脱落」「「ロッドジョイント部にガタ付きがある」「ロッドブッシュの摩耗」などがギアトラブルの原因。ワイヤーや脱落した固定プレートやロッドジョイントの調整、ブッシュ交換などでギアが入らないトラブルが改善または修理できます。

 

ギアが入らないトラブルを切り抜ける応急処置法とは？

走行中に当然ギアが入らないトラブルは「走行不能になる？」という危機感で取り乱してしまいがち。シフトチェンジができないギアトラブルが発生しても、発生原因によっては応急処置で走行が続けられるケースもあります。。

 

リカバリー方法はギアトラブルの原因によって異なる

ギアが入らないトラブルは必ずしも走行不能に直結するものではない場合もあります。ギアトラブルの原因を探って適切なリカバリーを行えば、自走で整備工場まで辿り着けるかもしれません。

しかし、リカバリーで自走できてもあくまで応急処置。そのまま整備工場へトラックを持ち込み専門家に症状を確認してもらい、適切な処置を行ってもらいましょう。

シンクロが原因の場合

使用するギア段を任意に選べるマニュアルミッション車は、走行中のギアはギア段ごとに回転速度が異なります。

回転速度が異なるとギアが入らずシフトチェンジできずに、ギア比が異なる各ギア段の回転数を同期させる必要があります。異なるギアの回転速度を同期させる装置がシンクロメッシュ（通称：シンクロ）で、シンクロの働きでギア段の異なるギアの回転数を同期させスムーズなシフトチェンジが行えます。

シンクロが原因でギアが入らない状態に陥った際に効果的な方法は、「ダブルクラッチ」を用いたシフトチェンジ。シンクロが普及するまでのトラックは、ダブルクラッチでギアの回転数を同期させシフトチェンジを行っていました。

ダブルクラッチは以下の手順で行うシフトチェンジテクニックです。

 

1.クラッチを切りシフトレバーをニュートラルにする

2.クラッチを繋いでアクセルを踏みエンジンを軽く煽る

3.クラッチを切りシフト操作を行う

4.クラッチを繋ぐ

 

通常のシフト操作に一度ニュートラルでエンジンを煽る動作を加えるのがダブルクラッチで、エンジンを煽ることでギアの回転数が同期できます。

クラッチが原因の場合

クラッチが原因でギアが入らないトラブル場合は、クラッチワイヤーや固定プレート、ロッドジョイントの調整でトラブルを解決できるケースが多く調整を行います。

調整後しばらくは走行できますが、早めに整備工場などの整備をおすすめします。

 

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ギアトラブルはトラックの専門家がいる中古トラック販売店へ！

ギアトラブルは日常のメンテナンス状態が良好であれば回避でき、発生しても軽微なトラブルとして対応でき得るトラブルです。中古トラックに対して「トラブル発生率が高いのでは？」とネガティブなイメージもありますが、現在は良好な整備環境で取り扱い車両の管理をしっかり行う中古トラック販売店が多いのです。

中古トラックは車両コンディションの個体差が大きく100％安心とは言い切れませんが、低年式や過走行の車両はしっかりした現車確認とメンテナンス履歴状態表の確認でコンディションが掴めます。

 

ギアトラブルは原因を探ることがポイント

ギアトラブルは発生原因の究明速度が速いほどリカバリーのチャンスが増えますし、ギアが入らないトラブルが発生した場合でもトラブルの原因を探りましょう。

ギアトラブルの原因となるのは以下の3ケースが多いので、ギアトラブル発生時には参考にしてください。

1.トランスミッション本体で生じるミッション系統

2.エンジンとトランスミッションを繋ぐクラッチ系統

3.シフトレバーとトランスミッションを繋ぐリンク系統

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