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トラック・運送・トラックドライバー情報

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運送業の働き方改革で労働時間はどう変わる? 労働時間の現状を徹底解説

更新日:2022/07/06
働く人の画像

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ネット販売市場は拡大しています。ネット販売の利用率が高まっているにもかかわらず、物流業界では相変わらず人員が足りないため、勤務時間が長くなったり離職などが起こっています。

そのような現状の中、2024年より政府主導で進められる働き方改革には、時間外労働の規制をはじめ大きな変更があります。

今回は働き方改革によって運送業の労働時間はどう変わるのかに関して徹底解説します。

運送業の働き方改革はいつから?

2019年4月に労働基準法が改正され、多くの業種の時間外労働は、年720時間が上限(1年間の猶予を与えられた中小企業を除く)になりました。

しかし、自動車運転業務の規制は5年間猶予され、2024年4月1日からの適用となっています。内容としては、主に「自動車運転の業務」の時間外労働は年間で960時間と上限が設けられます。

運送業の労働時間の現状

運送業での長時間労働の要因として「荷待ち時間」や「荷役作業(荷作りや仕分けなど)」があります。多くの集荷場や荷下ろし場では、他のトラックが荷積み、荷下ろしをしている間の待ち時間が長くなっています。ひどい時には5時間程度の待ち時間が発生しています。

さらに荷役作業などの付帯業務の発生も長時間労働の一因です。

運送業の働き方改革の内容

今回の働き方改革では、長時間労働の改善や年次有給休暇の取得などの各種の対策が打ち出されています。しかし、簡単には働き方改革の推進ができない業種もあります。そのうちの1つが運送業です。

時間外労働上限規制

2018年6月に働き方改革関連法が成立し、2019年4月から全産業を対象に「労働関係法令」が施行されました。この中で労働基準法による「時間外労働の上限規制」が適用になりました。

しかし、自動車運転業務は急な是正が難しいことから、2024年4月まで施行が猶予されています。

自動車運転業務に関する時間外労働時間の上限は、年960時間(休日労働は含まず)となりました。要するに、トラックドライバーは法定労働時間に加えて年960時間の範囲内で働けるということです。

月60時間以上の時間外労働の割増賃金の支払い義務

改正労働基準法では、月に60時間を超える時間外労働に関しては、法定割増賃金が50%以上に引き上げられています。

また、深夜の時間帯において、1カ月に60時間を超過する労働に関しては、深夜割増率25%以上の賃金に時間外割増率50%以上の賃金を加えて支払うように改正されています。

要するに、雇用側に対して、75%以上を加算した賃金支払いを義務づけているのです。

深夜労働とは22時から翌朝5時までの時間帯の労働を指します。この法令改正は、中小企業の場合、2023年からの適用です。

ドライバーの労働時間や休日の扱い

ドライバーの労働時間や休日に関する扱いの変更点に関して確認していきましょう。

拘束時間の扱い

トラックドライバーは、休憩時間も拘束時間に含まれます。

安全が大前提の業務ですから途中で仮眠をとることは必須です。その仮眠時間は休憩時間と同じように拘束時間に含まれることになります。走行や作業を行っていない時間が給与の対象にならないわけではありません。

また、労働時間の上限の13時間から仮眠時間や休憩時間を差し引いて考えることもできません。要するに、拘束時間とは運転している時間だけではなく休憩時間まですべて含んだ時間になるのです。

また、休息時間は1日の拘束時間が終わり、次の労働が始まるまでの時間のことですが、これは1日のうち継続した8時間以上と定められています。

荷待ち時間の扱い

荷待ち時間とは、運送業に携わるドライバーの特有のものです。荷物の積み下ろしや指示待ちなど、荷企業や物流施設の都合でドライバーが待機している時間のことを指します。

この荷待ち時間も拘束時間に含まれます。荷待ち時間が長くなれば、ドライバーの拘束時間も長くなります。

また、荷待ち時間が長くなることで、労働効率が下がり配送業務に支障をきたす場合があります。これは現在、効率化が進められています。

休日に関するルール

トラックドライバーの休日には、はっきりとした決まりがあります。1日の休息時間に24時間を足したものが休日とされています。上記の通り、ドライバーの1日の最低休息時間は8時間です。

つまり、最低でも8時間以上+24時間の32時間以上を休日として設定しなければなりません。もし、隔日勤務のドライバーであれば20時間以上+24時間の44時間以上が休日と定められています。

正規・非正規社員の同一労働同一賃金

運送業における「同一労働同一賃金」も2024年4月1日から適用となります。

「同一労働同一賃金」とは、正社員や非正規雇用労働者などの雇用形態に関係なく、同一の職場で同様の仕事内容に従事している従業員に対し、同一の賃金を支払うという考え方です。

運送業で支給される各種手当を正規・非正規問わずに支給しなければならないので、手当について再考する必要があります。

運送業が抱えている課題

運送業での働き方改革を進めるのが難しいといわれる背景には、運送業が抱えているさまざまな課題があります。運送業が抱えている代表的な課題について見ていきます。

深刻な人手不足

運送業界は荷扱い数の増加により業務量は増えているにもかかわらず、人手は増えていません。

運送業は他産業と比較すると賃金が低く、長時間労働になる業種です。そのために労働者が定着しにくいのです。

この状態のまま労働時間の規制が行われると、人手が足りるのかという問題もあります。

ネットショッピングの活発化による物流量の増加

運送業の需要が高まる要因として、ネットショッピングによる物流量の増加があります。ネットショッピングなどの普及により国内のEC市場は拡大を続けています。

近年のEC市場の成長と新型コロナウイルスによる巣ごもり需要もあり、今後ますます運送業の需要の高まりが予想されます。

人材の高齢化

トラックドライバーは高齢化しており、今後人手不足はさらに深刻化するでしょう。運送業は他の業界と比較して平均年齢が高く、しかも年々上昇しています。

トラックドライバー全体のうち40代から50代前半の高齢者層の割合は約45%を占めており、29歳以下の若年層の割合はわずか10%程度です。物流量が増えているにもかかわらず、人材の高齢化が進んでおり、今後の物流業界の危うい状況が見て取れます。

荷待ち時間の多さ

荷待ち時間の多さも課題の1つです。ここでいう荷待ち時間とは荷物の積み下ろしを待つ時間や荷下ろし場での順番待ちをする時間です。

トラックドライバーの1日の荷待ち時間の平均は約2時間ともいわれています。この2時間は作業が全く進みませんので、労働時間短縮を実現するにあたって大きな課題となっています。

運送業の働き方改革への打ち手

運送業における働き方改革へどのように対応すべきなのでしょうか。ここでは2つの項目について解説します。

労働生産性の向上

限られた人員で時間外労働の上限規制に対応するには、労働生産性の向上が不可欠です。労働生産性の向上には、ドライバーや物流会社の努力だけではなく、荷主の理解を得ることも大切です。

具体的には以下のような対策が必要です。

  • 荷待ち・荷役時間の削減
  • 高速道路の有効活用
  • 市街地での納品業務の時間の短縮
  • 長距離輸送の改革
  • 最新車両技術の導入

 

これらの対策の実施により、荷物の受け渡しがスムーズになり、各ドライバーの労働時間の短縮が見込めます。

適正な取引環境の確保

運送業での従業員の定着率を上げるためには、ドライバーの賃金をはじめとする処遇改善が欠かせません。安価での取引などは、ドライバーの低賃金化につながるため、荷主企業と元請企業が協力して、適正価格での取引を行うことが必要です。

運送業の働き方の見直しは必須

今回は働き方改革によって運送業の労働時間はどう変わるのか、働き方改革の内容に関して解説しました。

運送業界では、人手不足を要因とする長時間労働化や荷主企業などとの契約の兼ね合いもあり、改善がなかなか進まないという現状にあります。今後運送業における働き方改革を確実に進めるためには、多くの課題をクリアするために的確な対策をしていかなければなりません。